読了

「赤い人」吉村昭著

ホラー系の話かなと思ったら、囚人服の色で、北海道の刑務所の話でした。 明治初期は北海道開拓期で、全国の囚人を開拓のために北海道に送り込んで重労働させたのですな。 最初の樺戸監獄開設の話から驚きの連続でして、石狩川流域は今でこそ鉄道や車で移動…

「永楽帝――華夷秩序の完成」檀上寛著

講談社学術文庫。 明朝第三代皇帝永楽帝の業績について。 北の守りの燕王が、甥の二代皇帝を倒して三代皇帝になったという話は知っていたものの、詳細な話は知らなかった。蜂起する寸前は戦力を削減されまくって、数百程度しか兵力がなかったんですね。乾坤…

「子産」宮城谷昌光著

春秋時代の鄭の政治家子産のお話。 子産個人というより、鄭の政治家の群像劇って感じかな。 子産は子供の頃のほうがキャラが立ってて、将来を見通す力がすごいんだけど、大人になって政治家になると若干影が薄くなるという・・・ 大国普と楚の間で始終離反し…

「晴子情歌」高村薫著

前に読んだ太陽を曳く馬の前の話。話的にはほとんど繋がりはない、と思う。 母の晴子の人生をベースに、晴子と息子の彰之の二人を主人公として時代の雰囲気とか、青森の旧家の淀んだ血脈とかが主題・・・かな、テーマはよくわからなかった。 親子二人の話と…

「土の城指南」西股総生著

「城取り」の軍事学と似たようなテーマなんだけど、こっちはかなりガチに縄張り図の作成方法を指南している。 城の各パーツの解説が非常に勉強になった。 新しく建てた天守は犬山城そっくりばっかとか、見やすくすることを重視しすぎて跡を破壊しているとか…

「戦国の軍隊 現代軍事学から見た戦国大名の軍勢」西股総生著

戦国時代の軍隊の構成について。 正社員の武士と非正規の兵士の二重構造だったというのがテーマ。 渡辺勘兵衛の山中城攻めのくだりはとても面白い。山中城は行ったことあるので、どんな感じな城か想像できるのだけど、重装歩兵が曲輪をどんどん突破していく…

「「城取り」の軍事学」 西股総生著

日本の城、主に山城を軍事的視点から考察した内容。 築城者や築城年代が確定している城は2割もないほどで、城にある看板の記載はたいてい根拠がない。領主と城主をごっちゃにしている。 大名が地域の防衛のために差し向けた防衛隊の武将が城主の可能性が高い…

「ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅」井出明著

悲劇がテーマの観光ガイド。 前に沖縄に行ったときに、海軍司令部壕とかひめゆりとか平和記念公園行ったのが対応してるかなあ。 津波被害の跡は残しておいても仕方がないと思っていたけど、この本で書かれたように、無くすと記憶が消えてしまうというのはも…

「太公望」宮城谷昌光著

上中下。あんまり史料がない題材を、宮城谷先生が想像力で書き上げた。 最初は流浪の青年が、剣術と文字を仙人から修行して超人になるラノベ展開。 中盤はいろんな国に人脈作って対商王朝の裏ネットワーク作成。 終盤は周に士官して、一気に易姓革命。 周の…

「情報参謀」小口日出彦著

2009年自民党が下野してから、テレビとネットの情報データ分析をして情報を提供した話。 政治がネットを重視するようになった黎明期にどのようなことをしていたかという話で、とても興味深い。 多分世界の政治ではもっとディープなことをやっていると思うの…

「類推の山」ドーマル著

ホドロフスキーのホーリーマウンテンの原作と聞いて読んでみたけど、原作とは言えないような。映画の最後とこの小説は逆方向と思われる。 モーとホーとはおなじ体のなかにいるのです。僕はあなたのたったひとりの息子、モーホーなのです。

「スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943」アントニー・ビーヴァー著

個々のエピソードを連ねて、スターリングラード攻防戦を描いたノンフィクション。 前に読んだ卵をめぐる祖父の戦争でも画かれていた。 前半は独軍優勢で、膨大な消耗戦の果にウラヌス作戦でソ連軍の逆包囲が決まって形勢が定まってしまう。戦術的な話は少な…

「毛沢東―日本軍と共謀した男―」遠藤誉著

新潮新書。中国共産党毛沢東の真の目的は打倒国民党であって、抗日ではなかったという内容。 作者の主張を軸に、歴史の解釈を組み立てているので、真偽については検証が必要と思われるが、説得力はかなりある。 どこの国でも共産党は蠱毒みたいな感じになる…

「日本人の魂の原郷 沖縄久高島」比嘉 康雄著

集英社新書。2000年第一刷。筆者も2000年に亡くなっているんだな。 久高島は先月の沖縄旅行でレンタサイクルで一回りして、風景に感動したのだけど、民俗的な話は全然知らなかった。ぐぐったらいろいろ特殊な島であることがわかって、参考のためにこの新書を…

「経済学者たちの日米開戦―秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く」牧野 邦昭著

新潮新書。太平洋戦争前に、陸軍の調査機関秋丸機関による、各国の経済力分析結果の内容と、その報告書が日本の指導者に与えた影響について。 日本と英米では経済力に差がありすぎて、2,3年以上では勝負にならないこと。 日本が勝利するためには、イギリスを…

「空海」高村薫著

空海の足跡を文章と写真で辿った紀行文。 空海入寂後の分量も結構多く、生きている間の事績と、入寂後の民間信仰化はまったく別物であることを指摘している。 空海後の真言宗は、天台宗に比べると理論的発展はなくなり、民間信仰の中心のお大師様と、聖地高…

「物語は人生を救うのか」千野帽子著

「人はなぜ物語を求めるのか」の続編的内容。 フィクションとノンフィクションの違いは、単純に実際かそうではないか、だけではないとの指摘は初めて聞く話で参考になる。 自分の人生の物語は自分で選択できるという話が主題かな。 このあたりはプラユキ師の…

「シルトの梯子」グレッグ・イーガン著

久々にイーガンのハードSF読みました。 はるか未来に、物理学の実験したら物理が異なる宇宙ができちゃって、既存空間がどんどん侵食されてどうしましょうという内容。 正直なところ、描写が理解を超えてて、全然風景が浮かばなかったりする・・・ 淡々と読ん…

生死の覚悟

新潮新書。高村薫と南直哉の対談。 宮崎哲弥の仏教教理問答で南直哉と太陽を曳く馬の話が出たおかげで、太陽を曳く馬という初高村薫作品を読んだという因縁があり。 信仰に生きられない場合はどうすれば良いという問を持ち続けているわけですな。 私は坐禅を…

「拳豪伝」津本陽著

大東亜忍法帳に登場した物外和尚が主人公の剣豪小説。 講談調で、どこまで真実かよくわかりません。 大名に依頼されて、銀山の銀を運ぶ仕事の差配を引き受けて、盗賊と代官所で大立ち回りの回が面白かった。江戸時代盗賊多すぎ! だいぶ方向性は違うけど、澤…

「性と欲望の中国」安田峰俊著

文春新書。中国の性事情の紹介。 ちょっと前の東莞とかの性都の話は感心したが、習近平時代になったらもうないのね。今はそういう性都はないのかしら。 ラブドールとか日本のAVとか、わりと日本がエロ文化先進国で面白い。 近い将来は中国がエロ文化先進国に…

「チェルノブイリの祈り」スベトラーナ・アレクシエービッチ著

戦争は女の顔をしていないの著者による、チェルノブイリの当事者たちのインタビュー集。 最初の話が一番強烈で、最初に現場に行った消防士の妻の話で、消防士がモスクワの病院に搬送されたのについていって、無理やり看病するも、消防士は14日で死亡、妻は妊…

禿鷹の城

沖縄旅行中に読んだ本。 ・禿鷹の城 荒山徹著 朝鮮の役の幸州山城の戦いを題材にした歴史小説。 後の徳川家康の主人公の前日譚。忍者はあまり出てこないし、怪獣も出ないけどそれないに面白い。 ・米軍提督と太平洋戦争 谷光太郎著 太平洋戦争に参加した米軍…

「帰艦セズ」吉村昭著

戦前の出来事を戦後の人物が振り返る内容の短編集。 戦争に直接は関係ない話もいくつかある。多分作者が取材で得た内容を元に作った小説。作者自身の体験談もあるように思われる。 表題作が一番印象的で、弁当箱を忘れてしまって、艦に戻れなかった水兵のお…

「中世ヨーロッパの城の生活」ジョゼフ・ギース著

講談社学術文庫。 中世イギリスの城の話を中心に、城の歴史、戦闘、生活等が紹介されている。 RPGとか歴史小説とかの参考になりそう。 想像以上に昔の生活は人手で成り立っているわけで、城を運用するにはたくさんの労働者が必要になる。家宰が取り仕切るわ…

「戦争は女の顔をしていない」スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著

独ソ戦に従軍したソ連女性へのインタビュー集。 ヘビーな内容で、読書中に涙目になって精神力ががんがん削られる。 戦前は普通の女の子たちだったのに、開戦して志願して前線でとんでもなく悲惨な目にあって、戦後も白い目を向けられるとひたすら辛い。 看護…

「人類5000年史I ──紀元前の世界」出口治明著

BC3000~1年までの3000年の歴史の概説。 横のつながりが見えやすく述べられている。 国家のグランドデザインの設計者として卓越した存在として、アケメネス朝のダレイオス一世、秦の始皇帝、ローマのカエサルの三名を上げています。特に始皇帝はかなり有能さ…

「大東亜忍法帖【完全版】」 荒山徹著

荒山先生がやらかして、上下巻の下が発売されず、別ルートで完全版が出た本。やらかした内容はそんな大したことない気が。正直徳川家康が朝鮮人とかのほうがやばくね? 本の内容は、前半は魔界転生パクりすぎて志低いのでは・・・と思ったけど、物外和尚が動…

「空白の戦記」吉村昭著

太平洋戦争で語られなかった空白部分の短編集。 取り上げられている第四艦隊事件は知らなかった。駆逐艦が接触して船体損傷は聞いていたのですが、それは嘘で実際は船体破断で、前半部が一時行方不明になるほどの大事故でした。前半部はまだなかに人がいるの…

「進化の法則は北極のサメが知っていた」渡辺佑基著

河出新書。今年出た新書としてはかなりの傑作。 生物学研究者がフィールドワークの内容を紹介しつつ、動物全体を包括する代謝の法則を解説する。 代謝が体重の2/3乗に比例する(表面積/体積)というのはずっとそう思っていたのですが、実はそうではなくて3/4…