「エリザベート ハプスブルク家最後の皇女」塚本哲也著

1963年に亡くなったオーストリア帝国最後の皇女エリザベートのお話。
エリザベートは皇帝フランツ・ヨーゼフの孫でルドルフ皇太子の娘。
ルドルフ皇太子は彼女が小さい頃に愛人と心中。フランツ皇帝には他に男の直系子孫がいないので次の皇位継承者は甥のフェルディナンド大公。だけどフェルディナンド大公はサラエヴォ事件で暗殺されて第一次大戦になっちゃうのでした・・・
エリザベートはイケメンの青年将校に熱を上げて結婚するけど、若いころの恋愛のありがちとして互いの不倫で離婚。
そんなこんなで第一次大戦の心労で爺ちゃんのフランツ皇帝は病死、オーストリア帝国は敗戦で消滅しちゃうのでした・・・
エリザベートはその後社会党の活動家と恋人になり、後に結婚。この時代の社会党はまだ共産党の近縁と思われていて、その活動家と皇女の結婚は周囲を驚かせました。赤い皇女と呼ばれるようになります。
そんなこんなで大恐慌で世情は大混乱。ドイツはヒトラーのナチ党が政権を取り、強引なやり口でオーストリアを併合。エリザベートは今度はナチ政権下で第二次大戦を迎えることに・・・
第二次大戦後はソ連軍が進駐。連合国軍も進駐してオーストリアは四カ国軍の占領下になり、独立して永世中立国になるまでに10年以上かかることになります。
さらに冷戦下でハンガリー紛争など東欧は共産政権下で動乱の時代となり、1963年エリザベートは80歳で波乱の生涯を終えることになるのでした。オーストリア帝国だった国々がファシズム共産主義下で悲惨な運命をたどるのを見ていた彼女の思いはどのようなものだったのでしょうか。民族主義で帝国が分裂する前のほうが幸せな時代だったという考えも正しいかもしれません。