「スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943」アントニー・ビーヴァー著

個々のエピソードを連ねて、スターリングラード攻防戦を描いたノンフィクション。

前に読んだ卵をめぐる祖父の戦争でも画かれていた。

前半は独軍優勢で、膨大な消耗戦の果にウラヌス作戦でソ連軍の逆包囲が決まって形勢が定まってしまう。戦術的な話は少なめで、個々人の悲惨な逸話多し。

「毛沢東―日本軍と共謀した男―」遠藤誉著

新潮新書中国共産党毛沢東の真の目的は打倒国民党であって、抗日ではなかったという内容。

作者の主張を軸に、歴史の解釈を組み立てているので、真偽については検証が必要と思われるが、説得力はかなりある。

どこの国でも共産党蠱毒みたいな感じになるのはなんでだろうね・・・システムがルサンチマンを助長するのかねえ。

作者の体験した長春包囲戦の話がヘヴィすぎて驚き。

「日本人の魂の原郷 沖縄久高島」比嘉 康雄著

集英社新書。2000年第一刷。筆者も2000年に亡くなっているんだな。

久高島は先月の沖縄旅行でレンタサイクルで一回りして、風景に感動したのだけど、民俗的な話は全然知らなかった。ぐぐったらいろいろ特殊な島であることがわかって、参考のためにこの新書を読んでみた。

本では祭りの写真付きで説明があって、地名を見ながら、あそこでそんなことやってたんだと感慨深かったりする。

フボーウタキは立入禁止で、外から見た感じは森だったけど、中は丸い広場になってるのね。

島で話した売店のばあさんとか、おっさんとか、こういう祭りをやってたんだね。ただ、過疎化で神女が減っていって、今は祭りは簡略化あるいは中止されてきてるようで心配です。このまま同質化していくのだろうか?

「経済学者たちの日米開戦―秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く」牧野 邦昭著

新潮新書。太平洋戦争前に、陸軍の調査機関秋丸機関による、各国の経済力分析結果の内容と、その報告書が日本の指導者に与えた影響について。

日本と英米では経済力に差がありすぎて、2,3年以上では勝負にならないこと。

日本が勝利するためには、イギリスを戦線離脱させる必要があり、そのためにはドイツによる通商破壊が成功する必要があること。

対ソの北進と、対英の南進では、どちらでも結局欧米と戦うことになり、北進では石油が確保できないので論外であること。

経済力に差がありすぎるというのは元々常識的な考えで、指導者層はみな認識していた。

開戦を決めたのは非合理的に今からすると思えるが、時間がすぎるとガス欠で継戦能力がなくなり必敗であることと、負ける可能性は大だがもしかすると勝てるかもという選択肢は後者を選ぶのはありえることという結論。

 

昔見たこの記事は参考になるかな?

太平洋戦争の盲点とその戦略的解答

http://pathfind.motion.ne.jp/pow.htm

「空海」高村薫著

空海の足跡を文章と写真で辿った紀行文。

空海入寂後の分量も結構多く、生きている間の事績と、入寂後の民間信仰化はまったく別物であることを指摘している。

空海後の真言宗は、天台宗に比べると理論的発展はなくなり、民間信仰の中心のお大師様と、聖地高野山とで、浄土信仰化してしまうんですね。

「物語は人生を救うのか」千野帽子著

「人はなぜ物語を求めるのか」の続編的内容。

フィクションとノンフィクションの違いは、単純に実際かそうではないか、だけではないとの指摘は初めて聞く話で参考になる。

自分の人生の物語は自分で選択できるという話が主題かな。

このあたりはプラユキ師の、夜空の星から何を読み取るかは自分次第(人生からも同じ)と同じ趣旨と思われ、仏教と親和性のある考えかな。

人生は意味がない→虚無、と昔は感じていたけど、意味の有無とは離れて物事はあるがままそこにあり、どういう意味づけするかは自分次第ということに気づいたらだいぶ楽になった。意味づけするのは生物の本能であって、世界のあり方とはずれているのよね。