「長英逃亡」吉村昭著

蘭学者高野長英が外国侵略を憂いて政府批判をしたばっかりに蛮社の獄で永牢(終身刑)を食らったあたりからのお話。外部の人間を懐柔して放火させて、その騒ぎに乗じて逃亡。逃亡後の足取りは確かなことはわからないのですが、筆者は文献や先人の研究から一番正しそうな足取りを辿ります。
蘭学仲間や渡世人の助けを借りて関東から新潟に抜け、仙台に。その後いったん江戸に戻り、宇和島藩の庇護を受けて宇和島で洋書の翻訳。宇和島で危機が迫ったので江戸に戻り、顔を焼いて人相を変えて町医者として暮らすのですが、結局町方に感づかれて踏み込まれ、暴行死するのでした。洋書の翻訳レベルが高すぎて、こんな訳できるのは長英しかいないと捜査されてしまったのが運の尽きでした。
山風先生の本でもあったけど、長英が関わった人物はたいていあとで捕まってひどい目にあうんだよな。疫病神か。