「乃木希典」大濱 徹也著

講談社学術文庫。乃木の伝記と思いきや、乃木の人生は本の前半でさらっと書いてて、後半は乃木が社会に与えた影響の記録。

乃木家の親戚が玉木家で、希典の弟正誼は玉木文之進の養子なんですな。

希典の父母は共に超スパルタで、希典は子供の頃に家出して玉木文之進の家に寄宿している。希典が陸軍に入って、小倉の隊長になった時に萩の乱が発生して、弟正誼は反乱側で戦死して文之進は自刃するというハードな状況。数ヶ月後には西郷隆盛が挙兵して、希典も出征、軍旗を奪われるという失態をしてしまう。

若い頃は心の傷の影響からか、めちゃくちゃ宴席とか出まくって遊郭への出入りが激しい。長州出身なのに、同じ出身の女性は嫌で、薩摩の女性静子と結婚するというのも屈託してる。

静子にとってもきつい家だったようで、夫は家にいつかず、きつい姑と色々あったようで別居騒動とか起こしている。

希典はドイツ留学して、そこで軍人のなすべき姿に目覚めたようで、それからは後に知られるような謹厳実直な立ち居振る舞いになるのね。

日露戦争で息子二人が戦死して、国としても国民の不満をそらすために悲劇の将軍というイメージを作り上げたんですな。

明治天皇の殉死に関して、この本は世間がどういう反応をしたかページを多く割いていて、庶民や明治人は肯定的だけど、大正的価値観の人は結構否定的なんですな。