「三体III 死神永生」上下 劉 慈欣著

三体シリーズ最終巻。前作できれいに終わったかと思ったら、人類の命運はこれからだった。

主人公の程心は主体的なキャラじゃなくて、歴史のターニングをめぐる狂言回し的な役割かな。

前作の黒暗森林理論はかなり関心したけど、今作はさらに発展させて作者の想像力にびっくり。いろんなSFネタぶっこみまくりで、贅沢なこと極まりない。

三次元から四次元、三次元から二次元、光速改変と宇宙の法則がやばい。

三体世界のAI智子が体を得て、和風黒髪日本刀ニンジャスレイヤーになって、ブッコミ感はんぱない。ともこ。

地球は生命による環境改変されまくり、実は宇宙もそうなんだよ! な、なんだってー

 

「城郭考古学の冒険」千田 嘉博著

千田先生はテレビに出まくってるから、研究してるのかなあと思ってたけど、織豊系城郭の第一人者としての自負に溢れた本書を読んで、結構すごいんだなと見返した。

主に信長、秀吉、家康に関連する城の紹介が多く、過去の資料や現地調査から、過去の城址のありかたについて、示唆に富んだ内容でとてもおもしろい。

安土城はかなりすごいんだな。

海外の城と日本の城の相違点、モンゴルの城の発掘話等、知見が広まって良い。

「現代ロシアの軍事戦略」小泉 悠著

ソ連崩壊後のロシアは、経済力も技術力も先細りなのに、クリミア併合に成功するなど軍事的に大きな地位をしめているのはなぜか。ハイブリッド戦争とは何か、という内容。

ネットによるハッキング、世論誘導、ドローン技術等、ハイブリッド的な非軍事手段に力を入れるも、軍事的手段が最も重視されるのには変わりがない。

クリミア併合、シリア紛争、アゼルバイジャン戦争におけるロシア軍の振る舞いが参考になった。

後は年次ごとの軍事演習が、戦略を推理する元になるんだなあ。

「生き残った帝国ビザンティン」井上 浩一著

1000年間生き残ったビザンチン帝国のお話。

ローマ帝国の正統な後継であるという伝統意識があるから残ったわけだけど、伝統の裏で現実に合わせて政体を変えてきたから生き残ってこれたという解説。

国力がある時は拡張して、イタリアとか含む大帝国になるけど、大抵大きい国土が重しになって衰退。優れた皇帝が現れて政体を改革して生き残るという繰り返し。

前にサーサーン朝ペルシャ帝国の本を読んで、イスラム勢力に滅ぼされるのだけど、サーサーン朝のライバルのビザンチン帝国もイスラムにボコられるのね。そこから十字軍とかモンゴル帝国とか紆余曲折があって、最終的にオスマン帝国に滅ぼされる。

ビザンチン帝国は目玉をくり抜く刑罰多すぎ。

「100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影」春日 真人著

NHKスペシャルによる、ポアンカレ予想を証明したペレルマンの話。

ペレルマン以外にも、ポアンカレ予想を証明するための道筋を拓いた数学者たちも取材していて、多士済々で面白い。

ペレルマントポロジー的手法ではなく、物理学的手法を使ったと言っても、内容はさっぱりわからない・・・

フェルマーの最終定理でもそうだったけど、孤独に耐えないと大事は成せないのね。

「フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔」高橋 昌一郎著

20世紀前半に活躍したフォン・ノイマンの伝記。

マンハッタン計画で爆縮レンズ計算したというのは聞いてたけど、それ以外にも非常に広範囲に活躍したのね。

フォン・ノイマン以外にも第二次大戦のヨーロッパからアメリカに逃げてきた科学者たちの逸話も豊富。アインシュタインゲーデル等、他の科学者もキャラが強い。

チューリングアメリカでノイマンと一緒にコンピュータの研究をする可能性もあった。その場合はイギリスはエニグマを解読できず、アメリカでコンピュータがとんでもない発展をした可能性がある。

「専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話」忽那 賢志著

忽那先生による新型コロナの解説本。

先生の文書はよくネット記事になっているので、それをまとめた感じ。

コロナ以外の感染症全般の解説が詳しく、非常に勉強になった。