「インド三国志」陳舜臣著

17世紀のインド。この場合の三国は、イスラム教のムガール帝国、シヴァージー率いるヒンドゥー勢力、東インド会社

ムガール帝国中央アジア遊牧民による征服王朝で、当初は宗教に融和的だったものの、宗教キチのアウラングゼーブが皇帝になってイスラム以外を排撃。戦乱状態に。

東インド会社はイギリス、オランダ、フランス、ポルトガル等のヨーロッパ諸国が入り乱れていて、最終的にはイギリスが勝ち組になるのだけど、この小説はそこまでいかず、フランス東インド会社の勃興が描かれる。フランス東インド会社取締役のカロンがなかなかの人物で元々はオランダ人。若い頃は日本商館で料理人をやり、日本人女性と所帯を持つ。江戸幕府との通訳をやったりして頭角を表し、日本商館のNo.2になったりする。晩年はフランスに引き抜かれて東インド会社の取締役に。このときポンディシェリが建設されたのね。

ムガール帝国シュウ基地アウラングゼーブは人物としてはやり手と描かれるものの、イスラム以外を攻撃するから敵ばかりになって、この人の没後はムガール帝国は没落していく。アウラングゼーブがもうちょっと現実的なら、戦国状態にならなくて、東インド会社による植民地支配にならなかったのかも。

作者も言ってるけど、中国の三国志でいう董卓が死んだあたりまでしか書かれなくて、話の終わりの唐突感が否めない。最後まで書いてよ!