「土の記」高村薫著

上下巻。大宇陀の農夫の日常。日常と言っても、なんかしら事件があったり、農夫の認知力がふわふわしていたりで、わりと不穏な雰囲気が最後まで続く。

大宇陀は以前水分神社や大宇陀城あたりをレンタサイクルで回ったので、どんな感じかはイメージできる。そんなに過疎地というほどではなかったような。わりと近鉄や幹線道路から近い。

下巻で発生した東日本大震災の描写を読んで、私の体験と結構かぶると思ったり。本だと原発事故で農夫が茫然自失するところを、隣の義妹が淡々と芋を煮るシーンがある。私も原発事故を実家のテレビで見て、どうすりゃいいんだと判断停止したのですが、母がみんな一緒に死ぬだけのことだと言って淡々と食事の用意をしたのを思い出す。

最近読んだ紙の動物園でも、滅びる寸前の地球から逃れることのできない人たちが、淡々と日常を過ごすシーンがあって、判断停止とも受け取れるけどある種の覚悟とも受け取れるんだな。