「太陽を曳く馬」上下 高村薫著

あらすじだけ見ると殺人事件と自殺の可能性のある事故を中心にしたサスペンスなんだけど、実際は小説の皮をかぶった宗教談義なわけで、ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟的な感じです。
高村薫で三部作の三番目とは知らなかった・・・宮崎哲弥の仏教教理問答に出てきたので、仏教教理問答を参考書にして読みました。
私は仏教は大きく二つに分けて、教学的な流れと密教的な流れがあるとイメージしてたんですが、この本の中の坊主たちの対話で、<日本的(アニミズム?)>、<近大精神>、<ブッダ(超現実主義)>、<インド世界>というカテゴライズが出てきたのが衝撃的でした。日本の曼荼羅的宇宙観とインドのブラフマンは共通点があるように見えて実はかなり思考形態が違うと。
諸行無常と言っても日本的な文脈とインド的文脈ではだいぶ違いがありますわね。
私が今まで感じてた仏教のバクっとしたイメージが多少はカテゴライズされて、ちょっと輪郭がついてきた感じですが、だったら完全に見えたかというと逆にわからんことが多くなったような・・・