「大国の陰謀」W・H・マクニール著

『世界史』とか『疫病と世界史』とか『戦争の世界史――技術と軍隊と社会』とかのマクニール先生の著作。
題名から内容がわかりづらいですが、第二次大戦時の連合国側がどのように協力していったかという内容。
連合国米英ソは決して一枚岩ではなく、協力した理由はナチスドイツが存在したからに過ぎないとの指摘あり。
比較的協力体制が順調だった米英はともかく、ソ連との協調が困難だったことは、日米開戦後に米独間でも直ちに宣戦布告がなされたのに、日ソ間では中立状態が続いたことでもわかります。
米英間でも、アメリカの作戦主目標が太平洋か欧州かで対立があったり、第二戦線をフランスにするかバルカン半島にするかで対立があったりします。
アメリカ側がフランス上陸を主張する一方で、チャーチルバルカン半島を主張した理由は、戦後のソ連の東欧への影響を考慮したということがあるのですが、結局この頃にはイギリスはアメリカに主張を通すのが難しくなっているのでした。もう米ソの2大国による冷戦の兆しが見え始めているわけで、英ソは意識し始めている一方アメリカはドイツ敗戦後のソ連の脅威に気づいていないということですな。
他の戦線に比べると独ソ戦がかなり異質に見えるわけで、ソ連がドイツに打ち勝って強国として名乗りを上げたというのは、体制はともかく称賛に値することだと思ったりします。