「誰が太平洋戦争を始めたのか」別宮暖朗著

近代戦は膨大なペーパーワークを伴なう戦争計画がないと始められない。偶発事件から大戦争になるのはありえない。ナチスドイツによるポーランド、フランス、ソ連戦は明確にヒトラーの意思で始められたが、一方で太平洋戦争は誰の意思で始められたのかイマイチはっきりしない。この本によると日中戦争蒋介石が75万の軍を南京方面に展開したことによって発生した。結果的に日本軍が南京攻略に成功し、初戦は優勢であり、この時点で勝利をもって講和可能だったのだが、近衛首相の外交の失敗により泥沼化した。
実際のところ太平洋戦争すなわち対米戦は、日中戦争とはつながりが無く、必ずしも必要な戦争とは言えなかった。独ソ戦時にソ連に宣戦布告する選択もあった。アメリカは欧州に不介入の立場だったため、三国同盟を組まずにアジア権益を調整してアメリカと組むこともありえた。
ではなぜ太平洋戦争が起こったか。それは第一次世界大戦時の「シュリーフェン・プラン」と同じように「ハワイ作戦」という作戦計画が暴走したからであった。海軍は対米戦を行いたくなかったが、ハワイ作戦は行いたかったのである。ハワイの米軍太平洋艦隊を撃滅すればアメリカは講和を求めると思ったのでハワイ作戦後はノープラン。