「生物と無生物のあいだ」福岡伸一著。

新書ははずれが多いのですが、これはかなりの良書。分子生物学者の著者が生物と無生物の違いについて書いたものです。著者の生物のイメージは、水辺にある砂の城で、常に侵食されているものの精霊によって常に補修されている存在である、というものです。砂の城は姿を変えず、砂粒がその中を通り過ぎていく。
本の中で自分が驚いた記述は、同位体分析によると生物の体を形作っている原子は、脳細胞や骨に至るまで常に入れ替わっているとのことです。物を食べるということは、エネルギーを取るというより、原子の入れ替えのためだということです。脂肪なんかも、一度溜まったらなかなか取れないように見えますが、実際には原子は常に入れ替わっている。
ネズミの実験によると、食べたものの半分が体に留まっているとのことなので、食べたものの半分の重さの分、体は入れ替わっているわけですね。(人間でもそうかは本には載っておらず)
後は動的平衡の話とか非常に面白いことが載っているので、おすすめの一冊です。遺伝子に異常があっても問題が生じないっていうのもびっくりでした。


自分は仏陀諸行無常とか、ゲーデル不完全性定理が、逆説的にこの世の真理だと信じているので、こういう生物感は非常に喜ばしい。(確固たる存在=イデアが存在するのなら私の負け。まあ不完全性定理では無矛盾な公理系が証明できないって言ってるだけで、存在するかもしれんし)