恋に似たもの以外に恋があろうか

山田風太郎地獄太夫」における一休禅師と地獄太夫の会話
「禅師さま、わたしは力の及びます限り、多くの人々を愉しませようと一心に努めてまいりました。が、そうすることによって、大変苦しまれるお方が一人ございます。他の九十九人までの愉しみは淡雪のようなものでございますが、このお一人の不幸は命がけのものなのでございます。それは、他の人々は私の身体を愛していらっしゃるばかりでございますが、このお方は私の心までを愛していらっしゃるからなのでございます。−わたしはどうしたらようございましょう?」
わしは大いに笑って云った。
「地獄よ―案ずるな、その一人もただ、お前の美しい身体を愛しているだけじゃよ」
すると地獄も笑った。それは、かなしい、凄い笑いじゃった。
「左様でございましょうか?禅師さま」