「奇妙な菌類 ミクロ世界の生存戦略」白水 貴著

菌類がなんでもありでいかに様々な能力を持っているか紹介。

菌類が木材を分解する能力を獲得してから、石炭はできなくなったそうな。

微小生物を捕食する菌がいるとか、菌は植物より動物に近い。

高さ8mの幹を持つ菌の化石があるとか、どんな世界だよ。

「インド三国志」陳舜臣著

17世紀のインド。この場合の三国は、イスラム教のムガール帝国、シヴァージー率いるヒンドゥー勢力、東インド会社

ムガール帝国中央アジア遊牧民による征服王朝で、当初は宗教に融和的だったものの、宗教キチのアウラングゼーブが皇帝になってイスラム以外を排撃。戦乱状態に。

東インド会社はイギリス、オランダ、フランス、ポルトガル等のヨーロッパ諸国が入り乱れていて、最終的にはイギリスが勝ち組になるのだけど、この小説はそこまでいかず、フランス東インド会社の勃興が描かれる。フランス東インド会社取締役のカロンがなかなかの人物で元々はオランダ人。若い頃は日本商館で料理人をやり、日本人女性と所帯を持つ。江戸幕府との通訳をやったりして頭角を表し、日本商館のNo.2になったりする。晩年はフランスに引き抜かれて東インド会社の取締役に。このときポンディシェリが建設されたのね。

ムガール帝国シュウ基地アウラングゼーブは人物としてはやり手と描かれるものの、イスラム以外を攻撃するから敵ばかりになって、この人の没後はムガール帝国は没落していく。アウラングゼーブがもうちょっと現実的なら、戦国状態にならなくて、東インド会社による植民地支配にならなかったのかも。

作者も言ってるけど、中国の三国志でいう董卓が死んだあたりまでしか書かれなくて、話の終わりの唐突感が否めない。最後まで書いてよ!

「実在とは何か ――量子力学に残された究極の問い」アダム・ベッカー著

黎明期の量子力学の話から、コペンハーゲン解釈をめぐるボーア・アインシュタイン論争、ボームやベルらコペンハーゲン解釈に疑問を持つ物理学者の話。

内容的には先日読んだカルロ・ロヴェッリの本と近いが、カルロは自分の解釈が正しいという話で、こちらはコペンハーゲン解釈以外に主に3つの解釈があるという話。

「世界は「関係」でできている: 美しくも過激な量子論」カルロ・ロヴェッリ - shpolskyのブログ

 

パイロット波を考案したボームは以前読んだクリシュナムルティと対談した物理学者。結構重要な人だったのね・・・

「時間の終焉」クリシュナムルティ著 - shpolskyのブログ

 

ベルの不等式EPRパラドックスに関係しているという名前だけは聞いたことがあったけど、これほど重要な議論だとは知らなかった。ノーベル賞級なのでは。アインシュタインコペンハーゲン解釈に疑問を持ったけど、EPRパラドックスが実験でアインシュタインの疑問を覆す形になったからコペンハーゲン解釈が正しいという見方は正しくない。非局所性が証明された点はアインシュタインの疑問が覆された点だけど、これを持ってコペンハーゲン解釈が正しいとは言えないというのがこの本の主張。

前にドイチェ先生の本を読んだときは、多世界解釈が正しいから量子コンピュータが成り立つと思ったのですが、実は他の解釈でも量子コンピュータは成り立つそうな。だったらどの解釈が正しいか証明できないのでは・・・

エセとの区別はけっこう難しい - shpolskyのブログ

「無限の始まり:ひとはなぜ限りない可能性をもつのか」デイヴィッド・ドイッチュ著 - shpolskyのブログ

「世界は「関係」でできている: 美しくも過激な量子論」カルロ・ロヴェッリ

カルロ先生の三作目。

「すごい物理学講義」カルロ ロヴェッリ著 - shpolskyのブログ

「時間は存在しない」カルロ・ロヴェッリ著 - shpolskyのブログ

量子力学黎明期の物理学者のお話。そこから始まる量子力学の観測者問題。

観測者問題の解釈として、コペンハーゲン解釈や非主流の多世界解釈などの解説。

著者による関係性解釈。仏教の「空」との親和性。

そのものだけで実在している存在はなく、すべては関係性から成り立っている。

「北天の星」吉村昭著

上下巻。吉村先生が数書いている漂流物の一種ですが、船が難破したのではなくロシアに拉致されたという変わり種。

文化露寇というロシアの襲撃で択捉島にいた五郎次は連行されてオホーツクへ。日露の関係は険悪になって五郎次はなかなか帰国するチャンスがない。何度かオホーツクを脱走してサバイバルするも失敗。ロシアは日本語教師を確保しようとして誘うも、五郎次は最後まで拒否し、ゴローニン事件に伴い、捕虜交換のために日本へ。

日本側の険悪な姿勢があるもなんとか帰国できた。結局ゴローニン事件を解決に導いたのは、五郎次と入れ替わるように連行された高田屋嘉兵衛が、その情勢判断能力からロシア人艦長を説得して、ロシアに公的に日本に謝罪するようにしたんだな。五郎次もサバイバル能力が高くて有能なんだけど、高田屋嘉兵衛はかなり別格な感じ。司馬遼太郎菜の花の沖の主人公です。

この小説の後半は、話が打って変わって、五郎次がロシアで聞いてきた天然痘の種痘の話。五郎次が松前で奇跡的に入手した牛痘株を使って、日本で最初に種痘を成功します。残念なことに、五郎次は視野が狭くて、自分の収入元としてしか捉えられず、松前以外の地域には広まらなかった。五郎次の晩年に、他の医者が種痘の価値を認めて、株を譲って貰おうとするも、収入源が減ると言って断ってしまった。五郎次と同時期に株をロシアから持ち帰った久蔵は、広島藩に認められず種痘を実施することができなかった。種痘の実施は数十年遅れてしまったのでした。

「13億人のトイレ 下から見た経済大国インド」佐藤 大介著

人口13億人のインドで、トイレのない生活をしている人は5億人以上いるという衝撃の内容。

トイレを維持する経済的余裕がない人が多いとか、上下水道の整備が進んでいないとか、必要を感じていないとか、トイレ普及への道のりは遠い。

政府がトイレ普及のために補助金を出しても、途中でネコババされてるとか、トイレ作ってもその後のフォローがないとかなかなか難しい。

女性が野外で排泄するのは、野生動物とかレイプの危険があって、なるべく排泄は控えるようにしている人が多い。

トイレ掃除のカーストがいて、労働条件は劣悪。

トイレ環境の改善を目指すスタートアップ企業とか、日本企業とかが詳細される。

「羽柴を名乗った人々」黒田 基樹著

政権の強化のために、「羽柴」が一門衆から、有力大名へ広がっていく詳細。

有力大名はほぼ全部羽柴を名乗ることになる。

大坂の陣で羽柴本家が滅びたら、羽柴を名乗る家はなくなる。羽柴分家筋は木下になる。