「アメリカ彦蔵」吉村昭著

13歳の彦蔵が船乗りとして初航海で漂流し、アメリカ船に救助され渡米して・・・

という吉村昭先生の漂流ものの一つ。

彦蔵はジョン万次郎より10歳程度年下で、初めてアメリカ国籍取った日本人。三人の大統領に会ったという。

彦蔵以外にもたくさんの漂流者の運命にも触れられてます。

アメリカではすごく良くしてもらって開国後の日本に戻るけど、日本では攘夷の嵐で命の危険を感じてアメリカに戻ることに・・・なんだか文明度の差を感じてしまう。

バーニング・オーシャン

2010年メキシコ湾原油流出事故の映画化。ネトフリで視聴。

工程の遅れから、必要なテストを実施せずに作業を強行して、海底油田から原油が逆流、ガスで海上プラントが大爆発というお話。

現実が元ネタだから、つらい展開が続いて、スカッとすることはない。

これの前にネトフリで震える舌を見てたので、精神的につらい一日であった。

「犬の伊勢参り」仁科邦男著

江戸時代、60年ごとの遷宮に対応して、大規模なお伊勢参りブームがあり、人だけではなく犬も伊勢参りをしていたという記録。

決してオカルト的な話ではなく、数々の記録から実際の犬のお参り例は存在し、当時の人には当たり前の事象だった。

作者の分析によると、江戸時代は犬は個人に飼われていたことは少なく、村や町単位で飼われていた。人が抜け参りで移動すると、それを追って犬も移動したことがあったのではないか。当時の人々は神威を信じ、伊勢方面へ向かう犬は伊勢参りに行くものとみなし、食べ物を与えたり伊勢方向へ誘導したりしたのではないか。犬も人の期待を読み取って期待通りに移動して、食べ物にありつくという行動をとったのではないか、という推測。

「三体2 黒暗森林 」上下 劉慈欣著

前作の最後で絶望的やんけ!ってなってからの続編。

三体星人が攻めてくるまでの400年間の準備とその結末。

黒暗森林というアイデアが核で、コズミックホラー的な感じがします。

急に銀河英雄伝説ヤン・ウェンリーのセリフが出てきてワロタ。中国では流行ってるのね。

技術的なことと、社会哲学的なことと、作者は良く考えられると感心。中国人だからこういうブラックな宇宙観を持てるのかな。

何げに前作の主人公が、発端でありつつ、解決策もわかってたじゃん!

「彦九郎山河」吉村昭著

幕末の尊王運動の魁、高山彦九郎の生涯。

みなもと太郎風雲児たちの描写はちょっとギャグ風味で話を盛ってて、どこまで作り話かわからんところがある。作者の好き嫌いで人物の善玉悪玉はっきりしてるしね。

吉村昭だと、小説というより旅の宿泊記録かなって感じになる。

実家の兄と折り合いが悪くて戻れなくなり、蝦夷地に行こうと東北行きが話の前半。津軽蝦夷行きが許可されず、津軽や南部を回ることに。ここで東北の飢餓の悲惨さを知る。

京都で尊号事件に遭遇し、幕府に対抗するために島津藩に行って活動することに。

九州に行くも、幕府による締め付けがどんどん厳しくなり、尊号事件も頓挫して進退窮まって切腹という生涯でした。

津軽から鹿児島まで歩いて移動しまくるという行動力がすごい。最初は行く先々で歓迎されるんだけど、幕府に危険視されるとどんどん白い目で見られて行き先がなくなっていくという描写がつらい。

「源頼政と木曽義仲 - 勝者になれなかった源氏」永井晋著

中公新書。題名の両者に関係するのは以仁王で、それに関係したから結果的に滅んでしまった。

後白河法皇治天の君として即位させた高倉天皇の系統しか認めず、以仁王による反乱は皇位簒奪になるから絶対に認めない。源頼朝皇位に関係ないから妥協の余地がある。

頼朝は平氏との和睦もあり得たが、平氏は清盛の遺言で頼朝を不倶戴天の敵としていたから、こちらの妥協はできなかった。

義仲は以仁王の遺児の北陸宮を旗印にしてしまったばかりに、後白河法皇とは妥協できなかった。義仲の配下に政治情勢のわかる人間がいたら、妥協してうまく立ち回れたかもしれない。

源行家という頼朝や義経の叔父にあたる存在が面白い。共闘した人間に厄災をもたらす疫病神みたいな存在。

「奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語」三崎律日著

トンデモ本を面白おかしく紹介するような雰囲気を出しつつ、実際は割と真面目に現代の価値観と過去の価値観について考えさせる内容。

ヴォイニッチ手稿はよく話題になるけどさっぱりわからないので、これまでの流れが整理されて勉強になった。

米ソの宇宙開発競争の話も知らないことが多くて勉強になった。