13歳の彦蔵が船乗りとして初航海で漂流し、アメリカ船に救助され渡米して・・・
という吉村昭先生の漂流ものの一つ。
彦蔵はジョン万次郎より10歳程度年下で、初めてアメリカ国籍取った日本人。三人の大統領に会ったという。
彦蔵以外にもたくさんの漂流者の運命にも触れられてます。
アメリカではすごく良くしてもらって開国後の日本に戻るけど、日本では攘夷の嵐で命の危険を感じてアメリカに戻ることに・・・なんだか文明度の差を感じてしまう。
江戸時代、60年ごとの遷宮に対応して、大規模なお伊勢参りブームがあり、人だけではなく犬も伊勢参りをしていたという記録。
決してオカルト的な話ではなく、数々の記録から実際の犬のお参り例は存在し、当時の人には当たり前の事象だった。
作者の分析によると、江戸時代は犬は個人に飼われていたことは少なく、村や町単位で飼われていた。人が抜け参りで移動すると、それを追って犬も移動したことがあったのではないか。当時の人々は神威を信じ、伊勢方面へ向かう犬は伊勢参りに行くものとみなし、食べ物を与えたり伊勢方向へ誘導したりしたのではないか。犬も人の期待を読み取って期待通りに移動して、食べ物にありつくという行動をとったのではないか、という推測。
みなもと太郎の風雲児たちの描写はちょっとギャグ風味で話を盛ってて、どこまで作り話かわからんところがある。作者の好き嫌いで人物の善玉悪玉はっきりしてるしね。
吉村昭だと、小説というより旅の宿泊記録かなって感じになる。
実家の兄と折り合いが悪くて戻れなくなり、蝦夷地に行こうと東北行きが話の前半。津軽で蝦夷行きが許可されず、津軽や南部を回ることに。ここで東北の飢餓の悲惨さを知る。
京都で尊号事件に遭遇し、幕府に対抗するために島津藩に行って活動することに。
九州に行くも、幕府による締め付けがどんどん厳しくなり、尊号事件も頓挫して進退窮まって切腹という生涯でした。
津軽から鹿児島まで歩いて移動しまくるという行動力がすごい。最初は行く先々で歓迎されるんだけど、幕府に危険視されるとどんどん白い目で見られて行き先がなくなっていくという描写がつらい。