「真剣師小池重明」団鬼六著

賭け将棋真剣師小池重明の最期の面倒を見た団鬼六先生による伝記。

異様な将棋の強さに関わらず、破滅的な人生を送ったというのは滅法面白いのですが、

生まれと育ちが名古屋の名駅西のドヤ街というのは、私も名古屋出身で土地勘があって、昔の雰囲気を味わえたというのが一番面白かったりする。

名駅西はドヤ街で、笹島は飯場だったんですね。親戚が中村区に住んでて、名駅西から中村公園周辺までの地域が、今でも取り残されていると言うか、ちょっと違う雰囲気なのはわかるんです。リハビリ施設と風俗が混在してたりして面白かったりする。

今池や栄に将棋道場があって、小池が出入りしてたというのにへーって感じ。今でも将棋クラブみたいなのはあるような気がするけど、つながりはあるんだろうか。

最近の記事で藤井聡太が小池の棋譜を勉強したことがあるというような記事があって、面白い。

「ソ連が満洲に侵攻した夏」半藤一利著

終戦直前のソ連外交、満州関東軍の見通しの甘さ、ソ連軍侵攻の苛烈さ、開拓民の悲惨さが語られます。

ソ連侵攻が起こってほしくないから、逆にソ連は日本の味方をしてくれるという夢想に終戦直前の日本全体が陥っていたという描写に、ソ連の非道ぶりを知ってるものとしては唖然とする。

よくソ連が中立条約を一方的に破ったから卑怯だというけど、日本も関特演やってるのでそこは責められることではないと思う。

終戦直前では、関東軍は7割を南方に引き抜かれて骨抜き状態。そんな状態で戦争を続けるのは無謀で、戦争の終わらせるのがいかに重要かが課題。終わらせるのは非常に困難ではあるが。

虎頭要塞のように敢闘した話は知らなかったので心に残った。

「ガウディの伝言」外尾悦郎著

光文社新書サグラダファミリアで彫刻を作っている筆者によるサグラダファミリアとガウディの紹介。

筆者自体が興味深いキャラクターで、作業している状況の説明はまるで修行僧のよう。

サグラダファミリアは奇天烈な建物というイメージだったけど、そうではなく、すごくガウディの精神性がつまった建物なんだなあと感銘を受けた。一度行ってみたいね。

「エリザベス女王-史上最長・最強のイギリス君主」君塚直隆著

中公新書エリザベス女王の生涯。

エリザベス女王が非常に真面目な性格で、伯父や妹や子孫とは違って責任のある行動を常にとっているのは感心。

イギリスの君主、女王が国家元首である英連邦の元首、イギリスの植民地を起源とするコモンウェルスの首長という3つの立場があるという視点は非常に勉強になった。3つの立場が二律背反することもあるのだね。イギリスがECと加入したときはコモンウェルスとの経済関係は薄くなってしまった。女王はコモンウェルスを非常に重要視しているし、ECから離脱後はコモンウェルスとの経済関係は再び重要になるかもしれない。

昭和天皇が皇太子のときの欧州外遊で、女王祖父のジョージ5世から立憲君主とは何かという教えを受けたそうですが、エリザベス女王も1975年来日時に昭和天皇から教えを受けたそうで、その時のエリザベス女王の言葉に非常に感動した。

 

「昆虫はすごい」丸山宗利著

光文社新書

昆虫の様々な生態を紹介。

常識的な生物の枠に留まらない昆虫が大量に紹介されててびっくり。

メスがオスに生殖器を指して精子を吸い上げるとか想像を超えてくる。

蟻の巣の壁に擬態して蟻の蛹を食べるやつとか。

世代交代が早いから進化が早いということかな。

「呉越春秋 湖底の城」7,8巻 宮城谷昌光著

文庫本で8巻が最終巻だと思っていたら、単行本の9巻がまだあったのね。

7巻からは主人公が范蠡になって、越から見た呉との戦いの話になります。

越は他国人に開かないと言いつつ、人口が少ないからかすぐ採用される感じ。今まで田舎の国だと思ってた呉が急に都会っぽく見えてきます。

越王勾践は他の本だと口が尖ってるとか書いてたのでスネオみたいな容姿なのかなと思ってたら、この本ではかなり精悍な感じです。

越が呉に負けて、忍従の日々で最終巻へというところ。

「呉越春秋 湖底の城」5,6巻 宮城谷昌光著

孫子が呉の将軍になり、楚攻めが開始される。

これまでの戦いとは打って変わって、楚漢戦争の韓信の作戦とか三国志に出てくるような策略ましましな戦争が繰り広げられます。

楚の首都を陥落させるも昭王は捕まえられず。伍子胥は平王の墓を暴いて死骸を鞭打つ。

申包胥が秦の援軍を呼んできて、呉軍は撤退。以降は呉越の戦いに移る。

孫子があっさり死んじゃって切ない・・・