「花の歳月」宮城谷昌光著

貧しい家に生まれた娘が後宮に上がることになり、変転の末皇后になるお話。

漢の高祖劉邦亡き後の呂氏専制の時代で色々ドロドロしているものの、わりとさらっとした展開。おとぎ話みたいな感じ。

老荘思想がテーマかな。人間万事塞翁が馬みたいな感じ。

「認知症は早期発見で予防できる」青柳由則著

NHK認知症関連の番組作ったディレクターの書き下ろし。

2016年の本なので、ちょっと古いかもしれない。

アミロイドβが脳に蓄積するのが原因と思われていたが、アミロイドβを除去しても症状は改善しない。実は発症する20年前から軽度認知障害MCIが進んでいて、発症時は病気としては既に後期症状であるという。

MCIのうちに生活習慣を改善すれば、発症を遅らせることができる。

色々勉強になったので、最新の情報も追ってみようと思う。

「承久の乱 日本史のターニングポイント」本郷和人著

文春文庫。

鎌倉幕府は朝廷とはどう違うのか、鎌倉幕府の成立や承久の乱の意味合い等から解説した内容。

天皇を頂点とした国家機構と、御恩と奉公で繋がった地方領主の政権との相克だそうな。

源氏の将軍が三代で滅んだあと、生き残った北条が新たに王になったところも解説多し。

頼朝亡き後の将軍の権力と合議制との相克が、天皇と地方武士との対立に繋がっているというのは参考になった。

後鳥羽上皇が個人的能力と莫大な経済力を持った強力な天皇というのは知らなかったなあ。それに勝ったことで、鎌倉幕府は全国的な経済力を持つことができたと。

「海軍乙事件」吉村昭著

主に第二次大戦の話の短編集。

題名の海軍乙事件と甲事件の話があります。

乙事件は古賀連合艦隊司令長官飛行艇で移動中に行方不明になった事件で、

甲事件は山本連合艦隊司令長官が飛行機で移動中に撃墜された事件。

この本では、古賀長官の乗った行方不明の一番機の詳細はわからないので、不時着した二番機の顛末が書かれています。二番機はフィリピン近海に不時着後、搭乗者はフィリピン人ゲリラに拘束され、在日本陸軍部隊と交渉の末開放されます。その際行方不明になった機密書類について、日本海軍は特に心配していなかったが、実は米軍が入手して暗号解読していたことが戦後に明らかになったという・・・うかつすぎるだろう。

二番機搭乗で生き残った福留中将は結構長生きしてるのね。

「侠骨記」宮城谷昌光著

春秋やそれ以前の話の短編集。

百里奚や某ビッグネームの話が面白かった。

百里奚は若い時から仕官しようとしてもうまくいかなくて、老人になって人生諦めたら逆に宰相の道が拓けたという稀有な運命の人。あの秦が昔は有徳だったのね~とおとぎ話みたいな感じ。

「墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便」飯塚訓著

日航機墜落事故の遺体判別現場。

警察、医師、歯科医、看護師の努力で、飛散した遺体が判別していく様子は頭が下がる。

日本人と外国人の遺体への感覚が違うのはたまに聞くことで、私はどうせ燃やすのだからそんなにがんばって判別しなくても良いのではと思ってしまう。死者のために生者にどれだけ負担をかけて良いのかとも思う。